相続時精算課税制度と相続放棄
相続時精算課税制度を簡略して説明すると、60歳以上の親や祖父母から20歳以上の子供や孫に贈与をする際に、この制度を選択した場合、それ以降の贈与について合計2,500万円まで贈与税が無税となるものです。但し、相続発生時にはこの制度を利用して受けた財産を、相続財産に加算して相続税を算出することになります。ですから税金の支払いを、相続発生時に先送りしているだけとも言えるもので、この制度自体が直接的に節税につながるものではありません。よく使われる例としては、特定の不動産を生前にきちんと子供の名義にしておきたい場合などがあります。親の土地に子供が家を建てていたり、事業を行っている場合などが典型的な例だと思います。
さて、時折このような相談を受けることがあります。「相続時精算制度を選択し父親から土地の贈与をを受けていますが、最近になって父の事業がうまくいかず多額の負債を抱えてしまっています。この状態で父に相続が発生した場合、相続放棄をすることは出来るのか」というもの。
相続時精算課税制度を利用した贈与は前述のように、相続の前倒しとして扱われることから、相続時精算課税制度を利用すると相続放棄が出来なくなるのではないかという心配ですね。これは逆に言うと、この制度のことをよく理解されている方の発想だと感じます。私も当初は疑問に感じた部分です。
しかし、相続時精算課税制度を利用した財産は、相続税法上は「相続財産」となりますが、民法上では「放棄の対象となる相続財産」にはならず、相続放棄をすることが出来るのです。
但し、このケースでは当てはまりませんが、生前贈与時に贈与者が既に債務超過状態で、債権者からの請求を意図的に免れるために行われたと認められる場合には、その贈与自体が取り消される可能性があるということです。これは債権者側からすれば詐害行為にあたるということで、当然と言えるかもしれませんね。
人生は、いつ何が起きるかわかりません。いざというときのために、知っておくと役に立つこともあるかもしれません。
投稿者プロフィール
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高崎相続・遺言あんしん相談室代表
平成22年1月 宅地建物取引業 独立開業
平成25年4月 行政書士登録・開業後、同年10月に「高崎相続・遺言あんしん相談室」開設
行政書士(群馬県行政書士会所属 第13140556号)
宅地建物取引士(群馬)第010777号
法務研修館認定 相続法務指導員
(一社)家族信託普及協会認定 家族信託専門士
(一社)全国空き家相談士協会認定 空き家相談士
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